

私の医療方針
医療への思いについて~滋賀里病院70周年に寄せて
滋賀里病院創立70周年、誠におめでとうございます。長年にわたり地域の医療を支えてきた当院の歴史に、職員の一員として携わることができていることを大変誇りに思います。また、記念すべき紙面に私の拙文を掲載していただき大変光栄に存じます。
医療に対して、特別に高尚な理念や大きな志を持っているわけではありませんが、日々の診療においては「無理をしすぎないこと」と「目の前の状況に誠実であること」を大切にしています。サルトルの実存主義的な視点を借りるならば、あらかじめ定められた理想的な医療という「本質」を追い求めるのではなく、今ここにある具体的な患者さんと向き合う「実存」こそが優先されるべきだと考えています。
治療においては、理想的な選択を常に追い求めるというよりも、その時点で現実的に取り得る最適解を探し続ける姿勢を意識しています。これは現実主義(リアリズム)や、状況に応じて柔軟に対応する実践知に通じるものがあります。患者さんの背景や価値観も様々である以上、一つの正解に固執せず、その都度バランスを取りながら関わっていくことが重要だと考えています。
また、患者さん自身が持つ力に目を向けることも重要だと感じています。スピノザの「自己保存(コナトゥス)」の概念においては、ただ環境に流されるのではなく、自らの内なる力を自覚し、より能動的に生きようとすることそのものが「喜び」であり、人生を豊かにする鍵であるとされています。医療者の役割は、その力を損なわないこと、そして必要に応じて気づきを促し、引き出していくことにもあるのではないかと考えています。
アピールポイントと言えるか分かりませんが、過度に気負わず、状況に応じて柔軟に対応できる点があるかと思います。良くも悪くも力みすぎないため、落ち着いて判断できる場面も少なくありません。ここでショーペンハウアーの思想に目を向ければ、世界に存在する苦悩や限界を受け入れつつ、目の前の対象に寄り添うことの大切さが浮かび上がってくるように思います。無理をして理想にすがりつくのではなく、ありのままの現実と向き合う姿勢が、真の寄り添いにつながるのだと考えています。
まだまだ試行錯誤の途中ではありますが、自身の心身を保ち、現実を直視しながら、医療という営みに、今後も誠実に関わっていければと考えています。









